各種選考における課題の傾向と対策
こんにちわ。組織開発がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。
採用活動は常に完璧とは限りません。また、ある時期に完璧に見えていたとしても内外の環境が変化するため、完璧な状態を保てるとは限りません。そのため、継続的な改善が必要となります。
この記事では、各種選考における課題の傾向と対策についてまとめます。
各種選考について
ここでの各種選考とは、書類選考以降の1次選考、2次選考、最終選考などについてです。
合否の見極め
各種選考の1つ目の目的は合否の見極めです。各選考ステップごとに任意の観点を見極めるための選考が実施されます。
例えば、
ステップ | 観点 |
---|---|
1次選考 | ・全社のカルチャーマッチ |
2次選考 | ・求人ポジションにおけるスキルマッチ(技術力、ソフトスキル) ・チームマッチ |
などです。
実際は、このような粒度で観点が整理されておらず、確認するポイントが曖昧になっていたり、複数の選考で同じような観点を重複して見極めるような運用になっているケースもあるでしょう。
等級の見極め
各種選考の2つ目の目的は等級の見極めです。選考結果を踏まえて社内の等級制度におけるどこに位置しているかを見極める必要があります。その結果に応じて内定時に提示する給与が決まります。
例えば並の担当者〜シニアな担当者を受け入れる想定の求人があった場合、合否の見極めをするための最低ラインとは別に、並の担当者の等級とシニアな担当者の等級のどちらのレベルかを見極める必要があります。
この結果によって内定オファーをする際の提示年収が変わりますし、それによって応募者さんが内定を受諾するかどうかに影響があります。
意向上げ
各選考のもう3つ目の目的は意向上げです。採用の文脈では「アトラクト」と呼ばれます。採用活動は選ぶ活動だけではなく、選ばれる活動でもあります。アトラクトは応募者さんが転職に求めるものと、自社が提供できる条件がマッチしていることを伝え、入社したいと感じる気持ちを高めることです。
各種選考の課題
各種選考の典型的な課題には以下のようなものがあります。
見極めの課題
合否の見極めの課題
各選考の観点をチェックする合格判断の基準が曖昧であったり、その観点を確認するための選考方法に不足があると合格判断の質が下がります。結果として本来は不合格に相当する人が合格になったり、逆に本来は合格の人が不合格になる可能性が上がります。
詳しくは採用の偽陰性と偽陽性に関する以下の記事を参照ください。
等級の見極めの課題
各選考の観点をチェックする等級を見極めるための基準が曖昧であったり、その観点を確認するための選考方法に不足があると等級の判断の質が下がります。結果として、本来よりも低い給与でのオファーになり、内定辞退に至ったり、逆に本来よりも高い給与でオファーして内定を承諾してもらえたとしても、入社後に実力と給与のアンマッチでトラブルになる可能性が上がります。
意向上げの課題
昨今のITエンジニアの採用競争は激しく、複数の企業と併願している応募者さんが多くなりがちです。そして、ぜひ入社してもらいたい応募者さんが自社を選んでくれるとは限りません。そのため意向上げが不十分だと、選考競合となる他社と比較して劣り、辞退に至る可能性が上がります。逆に本来より盛って魅力を伝えると意向は上がるかもしれませんが、入社後に実態とのギャップが発生し、でモチベーションや早期離職になる可能性が上がります。
各種選考の課題への対策
見極めの対策
合否を見極める質の対策
各選考の質を安定させるためには、何を確認するかの「観点」を整理し、それを確認するための選考を整備することが必要です。
そのため、例えばスキルマッチの選考の場合
大カテゴリ | 小カテゴリ |
---|---|
技術力 | 技術1の確認観点と合格ライン |
技術力 | 技術2の確認観点と合格ライン |
技術力 | 技術3の確認観点と合格ライン |
ソフトスキル | ソフトスキル1の確認観点と合格ライン |
ソフトスキル | ソフトスキル2の確認観点と合格ライン |
ソフトスキル | ソフトスキル3の確認観点と合格ライン |
などのように事前に整理し、さらにそれぞれの観点を確認するための選考をとして、スキルマッチの選考に関しては実務形式に近い特性を持つWSTを用いたり、ソフトスキルについては構造化面接を用いるなどの方法があります。
等級を見極める質の対策
選考においては合否の見極めだけではなく、応募者さんの等級を判断する必要もあります。
まず、前提として想定される等級の幅が広すぎる求人は本来1つの方法で統一して選考できない可能性があり、求人の分割が必要なケースでしょう。例えば、大抵の会社において等級が3つ違えば担当する業務は全く異なり、同じ選考では実力を確認できないはずです。
そのうえで1つの求人が複数の等級にまたがる場合は、選考でどの水準までいっていればどの等級まで至っているとみなすのかについて事前に基準を定めて、選考評価をする必要があります。
例えば、ジュニア〜並のアプリエンジニアの採用をする求人があったとして、概ね単独で設計・開発を担当できるかどうかに関する基準をクリアしているなら並の等級として評価し、それ以下であればジュニアの等級として評価するような形です。
意向上げの対策
選考を通して自社の魅力をしっかりと伝える必要があります。応募者さんが求めるものは人によって異なるため、個別の対応が必要になります。
基本は
- A 応募者さんが転職に求めるものを把握すること
- B 応募者さんが転職に求めるもののうち、自社が提供できる条件を伝えること
ことにつきます。また、Bに受け答えするために、選考参加者は自社の魅力に関する理解度を高めておく必要があります。
応募者さんが求める点に関して自社がマッチしているのかどうか判断し、マッチしているなら具体的なエピソードや外部に公開された記事のURLとともに具体的な内容をお伝えしたいところです。
全体に共通する対策
すべての要素に共通する対策として、継続的な改善があります。
選考記録、辞退理由、入社後のアンマッチなどの情報を元にふりかえり、選考の進め方に課題があった部分を見極め、継続的に改善をしていくことです。大抵の場合、最初から完成度の高い状態にはなりにくいため、改善によって質を高めていくことが必要です。
また、仕事で求められるスキルは変化します。それを踏まえると選考に必要な観点も変化する可能性があり、観点が変化すればそれを確認するための選考内容も変更が必要になります。その意味でも継続的な改善は必要です。採用は改善以外のオペレーションだけでも負荷が高まるため、ついつい改善の時間を除外しがちですが、質を高めることが長い目で見た採用活動全体の効率を高める側面もあるため、一定の時間を確保して対応したいところです。
まとめ
各選考における課題の傾向と対策についてまとめました。
1次選考〜最終選考までの各選考は書類選考に比べると実施数が少なくなりますし、後半の選考になるほど実施数が少なくなります。それは負担の低さでもありますが、一方で改善機会や改善の元になる個別の選考に関わる情報が少なくなりがちということでもあります。限られた機会から最大限の情報を拾い上げ、改善していく必要があります。
特に「不採用となるはずの人が合格し、入社したとき、入社後に活躍できない」と「過度な意向上げをした結果、入社後のギャップでデモチして早期離職したとき」など、選考に課題があったことを確認できるのが入社後半年〜1年などになる場合もあり、ふりかえりのスパンが長くなるのも改善の難しさです。だからこそ、入社1年程度のトラブルにはアンテナを張り、その内容が採用段階からくるものかふりかえる必要があります。